桜が街を明るく照らし始めていた先日、丹沢にはいった。
沢を伝ってから、尾根にとりついてしばらくすると主稜線に合流した。
遠くまで見渡せるほどの景観の稜線道、腐った雪を避けながら歩いた。
登山道は深く溝を掘り、木道は醜く崩壊している。
丹沢の山があちこちで静かに崩壊しているようだ。
堪らなくなって地形図を見ながら尾根にはいった。

日当たりの良いところではブナに混じってヒメシャラが混生していて地被にはササが茂っている。
しばらくこんなササ原や枯れ葉のブナ林を下り、檜の植林帯に入ると林業関係者が自分達のためにつくった作業道にぶつかった。
そんな道を下って3時近くになっていたと思うが、突然、下から登ってくる女性に会った。
一見すると足元はしっかりしているようだったし、息も乱れていなかった。
互いにこんなところで獣以外にあったことに驚きながらもその人は
「稜線まで行ってみようと思っているのですが・・・。まだ随分ありますか?」
私は、つい、
「まだ始まったばかりですよ。この植林帯を抜けたら時間がいくら有っても去りがたいくらいの林になります。」と、いった。
その人はニコッと笑みを浮かべて植林帯をしっかりした足取りで登っていった。
私は尾根を下り、その人は尾根を登っていった。
人気の無いところをいつも歩くばかりであった私にはそれだけでも印象に残る山道であった。
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